北海道といえば、広大なエリアを持つその土地の中には、多種多様な特色を持つ都市が点在しています。札幌市や函館市、旭川市といった大きな中心都市から、北見市や網走市のような地方の小都市まで、各都市はたった一つしかないその個性を活かし、独自の風景を築いています。その土地で暮らす人々が生み出す文化や風習、生活スタイルが、その都市一つひとつに色を添えています。
私自身も、ジャーナリストとして北海道を訪れ、何度か取材活動を行ってきました。その度に、地域ならではの魅力や個性に触れ、その奥深さに心から感銘を受けてきました。とりわけ印象深いのが、ある地元の調査報告書を読んだときのことです。それには「北見市民は、自分たちの街、北見を“網走より都会”だと感じている」というデータが示されていました。
この結果に、ふと興味が沸きました。都市の大きさや設備など、目に見える具体的な要素だけでなく、彼らがなぜそう感じるのか、その背景にはどのような考えや体験が反映されているのか。その答えを探るべく、私は直接北見市に足を運び、市民の皆さんと話をし、現地で感じる都市の“雰囲気”や“空気”を、肌で感じることができました。北海道の各都市が持つ独自の魅力に触れ、その多様性と奥深さに改めて気づくことができた、それが北海道の取材で得た私の最も大きな収穫です。
北見市民が見る“都会”の定義
我々の使命感に燃える探求の旅は、まず北見市の地に足を踏み入れ、その市民一人一人に、“都会”とは何か、その定義について尋ねることから始まりました。札幌と比較した場合、規模や人口で言えば確かに小さい北見市ですが、そのことを問われた市民からは感銘的な言葉を聞くことができました。「札幌より小さくても、我々にとっては十分都会だ」と。彼らにとっての都会とは、その規模や人口だけを指すものではなく、生活を営む上で必要な多種多様な要素が詰まった場所、便利でアクセスのしやすい交通網がしっかりと整備されていること、最新の情報が素早く手に入ることなど、具体的な条件が重視されていることがわかりました。
さらに興味深かったのは、その市民たちが強調する”人間関係の密度”という点です。都会とは、人々が互いに顔を知り、共に喜びを分かち合い、悲しみを抱きしめ、助け合いながら生活する場所。その人間関係の深さ、それぞれの人々が織り成す人間ドラマの密度こそが、彼らにとっての‘都会’の一部を形成するのだと教えてもらいました。我々が今まで理解してきた都会の定義が、彼らの語る語る‘都会’の姿を通じて一層深まったのです。
北見市と網走市、それぞれの魅力と特性
次に、北海道の北見市と網走市について比較した視点から見てみましょう。北見市は、その土地が肥沃であることから玉ねぎやメロンなどの農産物が特産品として知られる地域です。ここでは人々が農作業に勤しむ風情が趣き深く、同時に洗練された都会的な生活も円滑に維持されています。このような日々の生活が、北見市特有の魅力を作り出していると言えるでしょう。
一方で、網走市は、海洋に直面していることから、自然と共生しながら生きることが一般的です。漁業が主要な産業となっており、その新鮮な魚介類は一度食べたら忘れられない美味しさです。また、ここには豊かな自然環境が広がっており、その風景は訪れる人々を魅了します。
これら北見市と網走市の生活様式や価値観、町の雰囲気は、その地域が持っている特性から生まれています。そして、それぞれが独自の魅力を持っています。それは、地域の特性が生活に深く影響を与えている証とも言えるでしょう。
しかし、ある意味で、この二つの都市は互いに対照的です。北見市民から見れば網走市は”田舎”というイメージを持つことが多いですが、その一方で網走市民からすれば、自然の中で暮らす生活こそが魅力であり、それは”都会”とは違った価値観があることを示しています。
都会と田舎、その役割と醍醐味
北見市民が”網走より都会”と感じるのは、自分たちが生活する空間に対する価値観から来る部分が大きいと思います。人々がどこを「都会」または「田舎」と感じるかは、その土地の特性や彼ら自身の生活経験、さらには社会的・文化的な背景に基づいた視点から形成されるものだからです。実際には、都会や田舎、それぞれが持っている役割と醍醐味は、どちらが優れていると断じることのできない独自のものです。都会には、街の利便性や情報の取得速度、多様な人々との交流の機会などが魅力として挙げられます。一方、田舎では、豊かな自然環境との共生やゆったりとした時間の流れ、地元の人々と深く結びついたコミュニティなどが醍醐味とされます。これらの「都会」や「田舎」、それぞれの空間に対する認識は、個々人の周囲の環境や価値観が大きく影響しており、それはまたその人々の生活スタイルや人生観に反映されます。私たちは、自分たちがどのような空間をどう理解し、どう評価するかを通じて、自分たち自身を再認識することができるのです。
まとめ
北海道の北見市に住む市民たちが彼らの街を”網走よりも都会”と自己評価するのは、その人々自身の生活や価値観が映し出されているからだと思います。この”都会”という表現は、市民たち自身の日々の暮らしの中で感じている充実感や満足度、そしてその地域の独自性や魅力を言葉にしたものかもしれません。都会と田舎、また大きな街と小さな街、それぞれが持つ特性や魅力は多種多様であり、これらを一概に比較しようとすること自体が難しく、大胆な試みであると感じています。たとえば、大都市の生活は便利さや多様性が魅力とされますが、一方で小さな町や村ではその豊かな自然や人々との深い絆、そして地域文化の継承などが大切にされています。何が良い、または何が悪いと一線を引くことは不可能で、それは見る人の視点や価値観によって変わるからです。私自身が北見市や網走市を訪れた経験からも、「都会」や「田舎」の定義は人それぞれであり、その定義はその人が暮らす環境や価値観に強く影響されていると再確認できました。それは非常に貴重な経験であり、人々が生活する地域の魅力を感じ取り、理解するための重要な視点を提供してくれました。
