人口 | 3,030 人 |
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面積 | 162.59 km² |
人口密度 | 18.6 人/km² |
北海道南西部、檜山振興局中部に位置する乙部町は、日本海に面し、古くから漁業と農業で栄えてきた町です。アイヌ文化の影響を色濃く受けた歴史を持ち、江戸時代中期にはニシン漁の拠点として大いに発展しました。町名はアイヌ語「オトウンペ」(河口に沼のある川)に由来し、現在の姫川がその由来の川です。
町の面積は162.53平方キロメートルで、その約81%が山林に覆われています。海岸線は檜山道立自然公園に指定され、雄大な断崖や奇岩、清らかな流れが織りなす自然景観が広がっています。乙部岳や九郎岳といった山々に囲まれ、突符岬や鮪ノ岬といった岬からは日本海を一望できます。
明治時代以降は開拓による農業の発展が進み、現在では米や大豆、ジャガイモ、ブロッコリーなど多彩な農産物が生産されています。漁業も盛んで、イカ、スケトウダラ、サクラマス、ウニやナマコの漁獲・増殖が行われています。地域の人々は北海道方言を話し、自然と共生する生活を営みながら、四季折々の祭りを通じて地域の文化を受け継いできました。こうした風土と人々の営みは、乙部町の観光資源としても高く評価されています。
文化・風習
乙部町は、アイヌ文化と和人の歴史が重なり合い、独自の文化を形成してきました。町内には縄文時代の遺跡や土器が出土しており、古代から人々が暮らしてきたことを物語っています。江戸時代中期以降、ニシン漁が盛んとなり、町は漁港として発展しました。その名残は、町の沿岸部に点在する史跡や文化財にも見ることができます。
明治以降の開拓では農業や林業が発展し、酪農や畑作を基盤とする生活が広がりました。現在でも、米や大豆、野菜の生産は町の基幹産業であり、これに海の幸が加わることで、乙部町の食文化は豊かに育まれています。
地域の言葉としては北海道方言が主に使われていますが、アイヌ文化に由来する地名や風習も残されており、地域アイデンティティの一部を形成しています。町では祭りが多く、特に「元和台マリンフェスティバル」や「温泉&産業まつり」などは町を代表するイベントです。こうした催しは地域の絆を深めるとともに、観光客にとっても町の魅力を体験できる貴重な機会となっています。
また、地元の小中学校では自然体験学習や地域学習が積極的に行われ、子どもたちは農業体験や地元食材を使った授業を通じて、地域文化を次世代へと引き継いでいます。乙部町は「自然と共生する暮らし」を体現する町であり、訪れる人々にその魅力を伝え続けています。
特産品
- 乙部米:肥沃な土壌と清らかな水で育つ乙部町の米は、粘りと甘みがあり、北海道ブランド米として高く評価されています。
- 黒千石大豆:栄養価が高く、風味豊かな大豆で、味噌や納豆、加工品に広く使われています。
- ブロッコリー・イチゴ:寒暖差のある気候を生かした栽培で、甘みが強く新鮮さが魅力です。
- スルメイカ:日本海で獲れるイカは鮮度が高く、刺身や干物として人気です。
- ウニ・ナマコ:近年増殖が進められており、乙部町の新しい水産資源として注目されています。
- 乙部ワイン:札幌酒精工業が手掛ける地ワインで、町の農産物を生かした特産品です。
年間イベント
- 元和台マリンフェスティバル:夏の海水浴場開設期間に合わせて開催されるイベントで、海のプールやマリンアクティビティを楽しめます。
- 温泉&産業まつり:8月上旬に開催される祭りで、温泉街を中心に地元の特産品や料理を堪能できます(近年は9月に「産業まつり」として開催)。
- ふれあい交流盆踊り:毎年8月14日に開催され、町民が一体となって踊り、交流を深めます。
- 八幡神社例大祭:8月14日から16日にかけて行われる伝統的な神事で、山車や祭礼行列が見どころです。
- 縁桂森林フェスティバル:秋分の日に開催され、巨木「縁桂」を舞台に自然と文化を楽しむイベントです。
- シバレ・ふれあい富岡:1月下旬に行われる冬の交流イベントで、雪国ならではの体験ができます。
アクセス方法
- 飛行機:最寄りは函館空港。空港から車で約2時間。
- 鉄道:町内に鉄道はなく、最寄り駅はJR函館本線八雲駅または新函館北斗駅です。
- バス:江差ターミナルから函館バスの檜山海岸線が乙部を経由し、八雲方面へ運行しています。
- 車:国道229号線を利用。函館市から約71km、江差町からは約12kmです。
観光スポット
- 乙部温泉 – 町内に3か所湧出しており、旅館やバリアフリー対応の温泉ホテルも整備されています。
- 滝瀬海岸「シラフラ」 – 白い凝灰岩の断崖が広がる絶景で、写真映えするスポット。
- 元和台海浜公園 – 環境省「快水浴場百選」に北海道で唯一選ばれた「海のプール」があります。
- 縁桂 – 幹回り6m以上、高さ40mの連理の巨木で、樹齢500年以上とされる天然記念物級の桂。
- 鮪ノ岬の柱状節理 – 安山岩の柱状節理が広がり、北海道指定天然記念物に指定されています。
- 乙部町郷土資料館 – 縄文時代の遺物や江戸時代の産業史資料を展示しています。